横山秀夫『陰の季節』(文藝春秋)

陰の季節 (文春文庫)陰の季節 (文春文庫)
横山 秀夫

文藝春秋 2001-10
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収録作品
陰の季節
地の声
黒い線


D県警シリーズ第一弾。
警察小説ではあるが、”裏方”ともいえる部署の人間を主に描いた短編集。
『陰の季節』に出てくる二渡(ふたわたり)は人事に携わる、警務課。
『地の声』の新堂は監察課。
『黒い線』の七尾は元機動鑑識班、現在は二渡と同じく、警務課の婦警。
『鞄』の柘植は秘書課。
ぱっと課名だけ聞いても、ほわんとしたイメージしか浮かばないのが、情けないところである。
D県警シリーズ、とあるだけあって、すべての作品がつながっていて、さっき読んだ作品の登場人物が他のところでも顔を出したり…と、シリーズの醍醐味、楽しさがあります。
二渡調査官が”エース”と呼ばれているのがカッコイイ!と一人、にまっとしてしまった…。
普段、のんびり暮らしているだけの私には、まさか警察の中でこんなやり取りや駆け引き、内部で静かな闘いが行われていることなど、知るよしもない。
だから、実際に登場人物と同じ思いなんて、したこともないし、きっとしないだろうなとも思うのだけれど、のめりこむ。
現実の警察内がこんな風だとは勿論言えないけれど。
相変わらず、男たちの野心やぎらぎらした心理描写に、ハラハラドキドキさせられる。
ひとを思いやる心、が尊い世界ではない。
婦警の七尾さんの親心的なくだりはほっとしてしまう。

横山作品は、いつも、丁寧に張り巡らされた伏線が、後半の後半で、ぐんぐんと収束され、思わず、登場人物と一緒に「!!」とラストを迎えるのが、すごく好きです。


↓単行本はこちら。

陰の季節陰の季節
横山 秀夫

文藝春秋 1998-10
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横山秀夫『真相』(双葉社)

真相 (双葉文庫)真相 (双葉文庫)
横山 秀夫

双葉社 2006-10
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収録作品
真相
18番ホール
不眠
花輪の海
他人の家


母と一緒に夢中になっている横山秀夫さん。
面白い。

今回の『真相』は警察小説、ではありません。
重いお話が多いのだけれど、後味が悪くないところがお気に入り。
全ての物語にドラマがあり、更なる謎や登場人物の思惑が浮き彫りになっていく様に引きずり込まれていく。

『真相』で先ずじんわりと涙し、『18番ホール』、『不眠』でハラハラドキドキし、『花輪の海』でひんやり、じんわりし、『他人の家』でまた息を呑む。

『花輪の海』は前半、読んでいて痛々しい描写があったのですが、ラストまで読み、収録作品の中で一番好きになりました。
青空を駆けるメール…ここが好き。

横山さんの作品は全てのお話に”救い”があるわけではなく、”光”に到達しないままに物語が終わることもある。
でも、読後感は悪くないんですよね。

物語が進むにつれて力が入り、終わるとようやく緩む感じがする。

ちょっぴり間は空けたいけれど、また近い内に読みたい作家さんです。

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横山秀夫『第三の時効』(集英社)

第三の時効 (集英社文庫)第三の時効 (集英社文庫)
横山 秀夫

集英社 2006-03-17
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収録作品
沈黙のアリバイ
第三の時効
囚人のジレンマ
密室の抜け穴
ペルソナの微笑
モノクロームの反転


F県警強行犯シリーズ第一弾!

えっ、これ、シリーズなの??
表紙裏のあらすじに先ず驚いてから、読み始める。

”時効”をテーマとした短編集というわけではない。

刑事VS容疑者だけではなく、刑事VS刑事の心理戦も描かれていて、相変わらず、ハラハラしながら読むことができました。

横山さんの描く刑事はベタなのかもしれないけれど、”正義感”あふれる刑事、という路線ではけしてなく、本当に男くさい、無骨な雰囲気あふれる刑事だなとまたもや思う。
若手刑事、矢代のキャラクタ(普段はひょうきんな振る舞いを見せるがそれには理由があり…)も良かった。
第1~3班とある中で、それぞれカラーがあり、その班の中でもドラマがある。

濃い、短編集です。

↓単行本はこちら。

第三の時効第三の時効
横山 秀夫

集英社 2003-02
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横山秀夫『臨場』(光文社)

臨場 (光文社文庫 よ 14-1)臨場 (光文社文庫 よ 14-1)
横山 秀夫

光文社 2007-09-06
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捜査一課調査官・倉石義男は死者からのメッセージを的確に読み取ってきた-誰もが自殺や病死と判断する案件を殺人だと見破り、また逆に殺人と見立てられた死体を「事件性なし」と覆す。
”終身検察官”と呼ばれる彼の生き様を描いた八編収録。


タイトルの”臨場”は”事件現場に臨み、初動捜査に当たること”を指すそうです。
倉石さんは色々と呼び名をつけられている、伝説的な男です。
”倉石学校”と言って、彼を慕う人々からは”校長”と呼ばれたり。
本人は無骨で、けして気さくな人柄とは言い難いのですが、検視の腕は超一流。
遺体、そして、現場、洞察力、判断力、その正確さに圧巻。
上が何と言おうと、絶対に譲らないものもちゃんと持っている、他の人物視点で描かれる、部下や被害者への彼なりの思いにもぐっときました。

メインは倉石。
でも、語り手は全て彼以外の人物。
その人物たちの倉石への感情も実に様々。
色んな視点から倉石、という人物の生き様を読むことができます。

横山さん…警察小説、はまりそうです。


↓単行本はこちら。

臨場臨場
横山 秀夫

光文社 2004-04-14
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↓コミックはこちら。
一体どんな風に描かれているのか、気になる!

臨場 1 (1) (芳文社コミックス)臨場 1 (1) (芳文社コミックス)
横山 秀夫 上農 ヒロ昭

芳文社 2007-09-15
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横山秀夫『深追い』(新潮社)

深追い深追い
横山 秀夫

新潮社 2007-04
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三ツ鐘署に勤務する7人の男たちと7つの事件。


横山さんの作品は『ルパンの消息』ぽっぽの感想)だけ読んだことがあります。
何となく、「読みにくいかなぁ」とそれまでは手を出していなくて、『ルパンの消息』が思いの外読み易く。
でもでも、デビュー作だから、文章が若いのかな??と疑い深い私(笑)
再び手に取った横山作品、タイトルは『深追い』。
うーん、内容、ヘヴィーなのかな??

7つのお話から成る短編集。
とっても読み易いです。
懸念なんてどこへやら。
内容はさすがに「ちゃらちゃらしてんな~」ということはないのですが、すいすい読めちゃいます。
すべての作品にそれぞれのドラマが詰まっていて、その物語の人物と一緒に唾をのむ感じ。
人の業にひやりとしたり、家族への想いに胸を打たれたり。
そんな短編たちにはどこかあたたかいものが含まれていて、読み心地はけして悪くありません。

何だか満足感。

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横山秀夫『ルパンの消息』(光文社)

「幻の処女作」がついにベールを脱いだ!

ルパンの消息ルパンの消息
横山 秀夫

光文社 2005-05-20
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ある日、警視庁にもたらされたタレこみ情報。 15年前に自殺として処理された女性教師は実は殺されたのだ-教え子の男子高校生3人の手によって。 時効まで24時間。 死の謎と男子3人によって計画された”ルパン作戦”が絡み合い、驚愕の結末へ。


どうなるの?どうなるの!?どうなるの!??
と、謎の謎の謎…というラストへの流れはとても素敵でした。
”犯人は誰だ!?”という問いかけに対する答えだけで終わらないところが良かったな。
とりあえず、最初の流れではそういう終わり方になるとは思ってもいなかったので。

”警察小説の名手”だなんて評されることがしばしばの横山秀夫さん。
ノベルスは文庫に比べると、売れ方が地味な印象(店の客層によって差はあるとは思いますが)。
横山秀夫さんの小説が気になっていた私は”ルパン”に何となくひかれて購入。
最近になってようやく読むことができました。
「(思っていたよりも)若い文章を書くんやなー」なんて。
加筆はされているようですが、処女作だから…かな。
読みやすく、ノリがよくて、面白い。

割とたくさん出てくるキャラクターの性格付けもきちっとできていて。
高校生、教師、警察。
罪を犯した者、過去に苦しむ者、現在を大切に思う者。
ツッパって学生生活を過ごしていた3人の男子高校生が15年経ち、全く違う道を生きている…。
高校生の頃、とはいきませんが、15年前を振り返ることができる歳になってくると、その歳月を感じることができて、ほろ苦い思いを感じました。

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