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映画を観る→『夕凪の街 桜の国』

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『夕凪の街』-原爆投下後13年、昭和33年、広島に暮らす、皆実。
『桜の国』-平成19年、東京に暮らす、七波。
異なる時代に生きた二人の女性が見つめる、広島、生きる喜び…。


夕凪の街桜の国夕凪の街桜の国
こうの 史代

双葉社 2004-10
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こうの史代さんの作品を読んだことはあるものの、こちらの原作は未読。
と言うのも、小中高と学校で戦争のことを学ぶ以外、極力戦争に関する書籍、テレビ番組、映画を自ら手に取ることをしなかったからです。
戦争のことを見たり、聞いたりし、知り、学ぶことは非常に大事なことであると思っています。
学生時代は原爆の日は登校日として、学校へ行き、ビデオを観、ひとの話を聞き、戦争について学びました。
『蛍の墓』を2回くらい観た気がしますが、他にも色々。
本当に情けないのですが、途中から耳を塞ぎ、目を閉じる始末。
中学・高校は修学旅行で広島・長崎に行きました。
現在も根底にあるものは同じではありますが、あの頃の私には”戦争の話”は恐怖でしかありませんでした。
現実だからこその逃れようの無い恐怖と悲しみ。
「なんでこんなに怖いビデオを観なあかんの?」と低学年の頃は泣きべそかいていた気がします。
この映画を観て、久々に「ピカ」という単語を耳にして、道徳の授業の光景が鮮明に蘇り、思わず、身体が緊張状態…凍りつきました。
これから、同じように原爆の日に、この映画を鑑賞する学校が出てくるかもしれない、観終わった後、ふと思いました。

この映画は麻生久美子さんと田中麗奈さん、叔母と姪にあたるふたりの女性の物語です。
七波は皆実の生きていた頃の広島をたどりつつ、現在を生きる…という感じですが。
皆実は原爆で妹と父を亡くしたという経験から自分が生きていることが深い心の傷となっている。
前半、皆実と母、会社の人間とのやりとりはとても”平和”で、とても愛おしい。
同僚の打越(吉沢悠)が皆実にプレゼントを渡すところなど、非常に胸キュンの場面!
皆実の言葉にはハッとさせられるものも多かったです。
原爆投下は「死ねばいいと思われた」がために行われた。
まさに命が消える直前も、皆実は空に向かって、原爆を落とした「誰か」に向かって、心の中でこう投げかけます。
「やった!また一人殺せたってちゃんと思うてくれてる?」*少し台詞違ってしまっているかも、すみません。
原爆は「落ちた」のではなく、「落とされた」のだと弟に言う場面も印象的でした。
殺すために落としたんだから、喜んでくれてる?と皆実は空に投げかける。
被爆者→原爆ではなく、原爆を落とした”誰か”に対する、シンプルで、真っ直ぐな台詞にドキリとしました。
だからこそ、皆実を想う打越の「生きとってくれて、ありがとう」という何の飾り気もない言葉も胸に響いたのだと思います。
皆実の言葉に涙が自然とこぼれてしまいました。
麻生さんの演技、とても良かったです。

そして、現代。
七波の快活な行動は観ていて、スカッとするものでした。
物語終盤の”ナイスシュート”シーンなんて、素敵。
彼女は父・旭(皆実の弟、堺正章)が近頃行動が不審だ、ということで尾行していた所、流れで広島まで行くことに。
旭が昔=伊崎充則さん、現在=堺正章さんなのは良いとして、打越が田山涼成さんなのが、全然笑うシーンではないのに、ちょっと吹き出しそうになりました…^^;
実際はもっとお若いだろうにばっちり白髪にされていましたし、演技も不自然ではないのですが、吉沢さん→田山さんのギャップが…。
七波が辿る広島、原爆は現代を生きる、戦争を知らない人々の知識導入へとなるのではないかと思います。
実感はないけれど、確かにそこで起きたこと、だからこそある、現在。

観終わった後、思ったことはどうしても、私は皆実-実際に原爆を体験した人と全く同じ気持ちを抱くことはできない。
でも、生きていることの奇跡、有り難み、愛おしさをこの映画によって、改めて感じることができました。
まだまだ私は無知であるけれど。
戦争は、やはり、”人を殺す”行為であるのだと、好戦派の人々に少しでも理解して欲しい。
そこに、ひとの意思が含まれることが、何よりも怖い、悲しい。

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Comments

訪問ありがとうございました!ほんと、胸キュン場面もあって、でも、その直後に悲しい場面に引き戻されてしまいましたが、やっぱり、人には優しく接したいって思いました。自分に出来ることから、始めたいです。広島も長崎も行かれたんですねー。私は長崎に、大人になってから行きましたが、時がとまったような、不気味な雰囲気に怖くなりました。

Posted by: アンドシーヌ | August 15, 2007 05:14 PM

コメント、ありがとうございます!
広島も長崎も、展示を見た後、冷房がどうとかではなくて、身体が妙に冷えきっていたことを記憶しています。
日常ではなかなか意識することのできない、平和であることの素晴らしさ、”戦争”の恐ろしさを今までと少し違う視点で感じることの出来た映画でした。
ひとには優しく…皆がそういう風に思い始めるとことが”戦争”をなくす第一歩、ですよね。

Posted by: ぽっぽ | August 16, 2007 08:12 PM

実は今日、妹と一緒に迷った末に見に行かなかったんだよね。
「広島の話か・・」で二人とも固まっちゃって(>_<)

でも原作は読みました。
私も前半、皆実の部分が特に凄くショックだったなあ。
また機会が巡ったら、映画も頑張ってみたいです。

Posted by: kiyu | August 17, 2007 12:27 AM

戦争の描写は絵とちょっとだけ回想シーンなどで出ますが、そういう意味ではソフトな作品です。
私も、観た後のダメージを考えて避けてはいたのですが、たまたま鑑賞券が当たり。
麻生さんがとてもきれいでした。
田中麗奈ちゃんの現代パートが緩和してくれる印象の映画です。
機会があったら観てみてねv
原作が逆に今、怖くて読めないぽっぽであります^^;

Posted by: ぽっぽ | August 19, 2007 10:40 AM

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2007年 日本 この頃、邦画ばっかり見に行ってるなあ。 これは、こないだトップランナーに佐々部清監督が出ていて、語っておられましたが、広島の被爆者の悲しみを描いたとってもずっしりとくる映画でした。 主演の麻生久美子さんは、薄幸女優ベスト3に選ばれたというくらい、もう、かわいそうでかわいそうで・・・。顔色悪いし、「カンゾー先生」の時の元気いっぱい泳いでるシーンとは、まったく別の昭和のかんじが出ていました。 一見仲の良い親子、藤村志保さんとのお風呂やさんでのシーン。..... [Read More]

Tracked on August 15, 2007 05:14 PM

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