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三田誠広『いちご同盟』(集英社)

「百まで生きて、その間、直美のことを、ずぅっと憶えていよう」

いちご同盟 (集英社文庫)いちご同盟 (集英社文庫)
三田 誠広

集英社 1991-10-18
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中学三年生の良一は、同級生の野球部のエース・徹也を通じて、重症の腫瘍で入院中の少女・直美を知る。
徹也は対抗試合に全力を尽くして直美を力づけ、良一もよい話し相手になって彼女を慰める。
ある日、直美が突然良一に言った。
「あたしと、心中しない?」
ガラス細工のように繊細な少年の日の恋愛と友情、生と死をリリカルに描いた長篇。(裏表紙・あらすじより)


文庫コーナーをぐるっと見て、”読んだことのない作家さんの本”を探り、表紙の写真にひかれて選んだ一冊。
教室の、凛とした風景。
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私の衝動買いでは珍しい、ヒット!でした。
1日あれば、読めるページ数です。
けして、小難しくも、固くも、暗くもない。
後半を電車の中で読んでいる内に、涙で目が潤んできていました。
何て、瑞々しくて、澄んでいるんだろう。

主人公である良一はピアノの講師をしている母に反感を抱きながらも、ピアノを弾くことも諦められず、成績も伸び悩み、進路に悩んでいるところ。
そして、自殺した小学生の誰にぶつけたのか知れない遺書に関心を持ったことから、生きるということ、死ぬということについて考え始める。
そんな中、出会う徹也と直美。
良一の学校の野球部でスター的存在、明るくて、女子にも人気がある。
推薦をもらい、高校への進学も決まった。
しかし、良一から見た徹也は”悲しい時に、わざと明るくふるまう””そんなやつ”
徹也は非常に素敵です。
兄妹のように育った、幼なじみの直美が病魔に侵されていく中、彼は沈んだ顔を見せることなく、常に直美に正面から接し、「いじけている」とストレートに言葉をぶつける。
人前では冗談を飛ばし、直美の病気が進行する中でも同級生の前ではおちゃらけているけれど、その心の中はいつも直美のことを考えている。
病のせいか、少し大人びたところを含む直美も真っ直ぐです。
病気のことで涙をこぼしつつも、「うふっ」と時折、笑顔を見せる。
徹也が大事に思い、良一がひかれていくという設定に無理がなく、自然でした。
物語を通して、良一自身も様々なことを考え、成長していきます。

重い病にかかった少女が出てくる、というのはありふれた題材かもしれないけれど、それに主軸を置き、直美にクローズドアップされたストーリーではない。

この作品は少年少女の心の成長を描いています。
愛と勇気、そして、希望の物語です。

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Comments

文庫の表紙。きれい!
これでは「ひとめぼれ」しちゃいますね。
内容も、すごく惹かれる。

「百まで生きて、その間、直美のことを、ずぅっと憶えていよう」

ていう台詞。すごくいいな。
これだけで、泣けそうなくらいに。

Posted by: あかね | July 18, 2007 at 11:55 AM

青春、という単語だけで目がウルウルしてしまう私にはストライクでした。
少年少女の切ない、素敵な時期が描かれていました。

Posted by: ぽっぽ | July 19, 2007 at 11:13 PM

懐かしい1冊ですね~!
アマゾンのランキングを見るに、きっと”古典”のようになって来てるんだと思うけど、出版当時すごく話題になった本だったんだよ。
私が高校生の時で、読んだ時の切ない感じを覚えています。
細かいストーリーはもう忘れちゃってるから、ナツイチで読もうかな♪

Posted by: kiyu | July 23, 2007 at 03:46 PM

話題作…納得です。
胸がぎゅっとしてしまう切なさを味わえました。
高校生の時とはまた違う読後感があるかもですね☆

Posted by: ぽっぽ | July 24, 2007 at 10:10 AM

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